ノーズショップのムエット特集です。
今回は、わたしの大好きな調香師 ジャン=クロード・エレナ様と、その娘であるセリーヌ・エレナ様の親子二代共演の香りについて大興奮でレポしています。
エルメスを離れたジャン=クロード・エレナ、そしてそのDNAを引き継ぐセリーヌ・エレナ、いったいどんな香りを創り出しているのでしょうか。
ジャン=クロード・エレナの創り出した香り
ジャン=クロード・エレナといえば、エルメスの「庭園シリーズ」を創り出したことでも有名な調香師です。
長い間エルメス専属の調香師として活動していたのですが、2016年に引退してからもフリーで活躍されています。
わたしはつい先日エルメスデビューを果たしてきたのですが、すっかりジャン=クロード・エレナ様の創り出す香りの虜になってしまいました。
わたしが思うジャン=クロード・エレナの魅力は、甘いけど甘すぎず、柔らかくとても優しい香り。
海外の香水ってどうしても香りが強くなりがちなのですが、ジャン=クロード・エレナの香水はどれもとても軽やかでみずみずしい印象があります。
それがとても新鮮で、すっかりファンになってしまいました。
とはいえ、お恥ずかしながらエルメス以外のジャン=クロード・エレナ調香の香水を嗅いだことがないので今回のムエットキャンペーンはとても楽しみにしていました。大興奮です。
リモーヌ/ラボラトリオ・オルファティーボ
- 本国表記:Limone
- ブランド:LABORATORIO OLFATTIVO(ラボラトリオ・オルファティーボ)
アマルフィ海岸への旅。地中海の青さに突き刺さるような断崖絶壁の道に沿って走る。曲がり角で目に飛び込む鮮烈な風景。レモンの黄色が青銅色の石壁に模様を作る。この景観の美しさに抗えるものなどいない。(出典:noseshop)
吸い込んだ瞬間から飛び込むのが、フレッシュで瑞々しいレモン!
もぎたてのレモンをその場で思いっきり絞ったような、爽やかだけど皮の渋みもほのかに感じられるトップ、その直後にはホワイトムスクの柔らかく優しい香りに包まれ、角の取れた丸みを帯びたシトラスノートがふわっと存在します。
ベルガモット/ラボラトリオ・オルファティーボ
- 本国表記:Bergamotto
- ブランド:LABORATORIO OLFATTIVO(ラボラトリオ・オルファティーボ)
何の香りが好きか?と尋ねられるたびに、私は好きな香りはないと答えてきた。調香師には神秘性が必要だからだ。本当はどんな人間にも香りの好みは存在する。いま初めて打ち明けよう。私はベルガモットを愛している。(出典:noseshop)
「ベルガモット」と直接的に名前がついた香水って意外と珍しいのではないでしょうか?
ベルガモットは爽やかさと渋みの二面性がある香りだと思っているのですが、この香水はベルガモットの”爽やかさ”を全面に引き出し、渋みはカルダモンやホワイトムスクで抑えているように感じました。
最初感じたのは「みかん」。 なんだか日本的な感覚で少し申し訳ないのですが、ベルガモットというよりは、甘さのある柑橘系、身近なものだとみかんにとても近く感じます。
そのまま深く香りを吸い込んでいくと、みかんの甘さの中にカルダモンのややピリリとした芯のある香りがしっかり存在し、ふわふわとした香りをキュッと引き締めます。
ジャン=クロード・エレナはシトラスのもつシャープさから角をとった丸みのある優しい香りを創り出す天才だと思っているのですが、まさにこのベルガモットもそのひとつ!
ベルガモット単体では渋みが強くなってしまうところを、ビターオレンジとホワイトムスクで丸く、それだけだとふわふわしてしまう香りをカルダモンという香り高いスパイスでキュッと引き締めたのかなと思いました。
マンダリーノ/ラボラトリオ・オルファティーボ
- 100mL:18,700円(税込)
- 原産国:イタリア
- 本国表記: MANDARINO
- ブランド:LABORATORIO OLFATTIVO(ラボラトリオ・オルファティーボ)
マンダリン、それはすべての柑橘類の中で最も喜ばしいもの。シンプルかつ洗練された香りが永く続く。溢れんばかりの晴れやかな笑顔になりたいときには、これひとつで、またはお気に入りの香りに重ねて。(出典:noseshop)
オレンジの香りは、アロマの世界でも元気になりたいときに使われる精油です。
この香水のコンセプトにもなっている「溢れんばかりの晴れやかな笑顔」は、オレンジのもつパアッと明るいジューシーさと、ブラックカラントのフルーティーな甘さを兼ね備えたもの。
ほのかに甘いけど甘すぎない、この絶妙なラインを創り出せるのがジャン=クロード・エレナのなせる技だと改めて実感しました。
ベースにはホワイトムスクを使用しているので、実際に肌にのせたときには、時間が経つほどにホッと落ち着くような香りになるんだろうな。
バリフローラ/ラボラトリオ・オルファティーボ
- 30mL:14,300円(税込)
- 100mL:25,300円(税込)
- 原産国:イタリア
- 本国表記:BALIFLORA
- ブランド:LABORATORIO OLFATTIVO(ラボラトリオ・オルファティーボ)
風景よりもその香りが記憶に残っている場所がある。バリ島の花の中で風景は次々に極彩色の香りへとかわる。フランジパニを取り巻く花々を神に捧げると、島の美しさが溢れ出す。島の神秘を饒舌に語るかのように。(出典:noseshop)
フランジパニって、プルメリアなんですね。
バリ島を代表するお花だそうです。
たしかに南国のイメージがあります。
バリフローラはそのまま”バリのお花”をイメージした香りということもあって、プルメリアを中心にジャスミンやオレンジブロッサムなどの芳醇で南国風なお花の香りがたっぷり!
しかし、お花だけでは終わらせないのがジャン=クロード・エレナ。
フローラルをふわっと軽やかなホワイトムスクで包み込み、優しげな印象に仕上げています。
ジャン=クロード・エレナはシトラスもそうですが、ホワイトムスクも好んで使う印象です。香りを柔らかく優しくするためにほんの少し加えているのでしょうか。その辺も気になりますね。
チュベローシス/ラボラトリオ・オルファティーボ
- 30mL:14,300円(税込)
- 100mL:25,300円(税込)
- 原産国:イタリア
- 本国表記: TUBEROSIS
- ブランド:LABORATORIO OLFATTIVO(ラボラトリオ・オルファティーボ)
秋の夕暮れ、寒気が襲う。夜が明けると冬がそこに見えるだろう。庭にチュベローズが咲いていた。それは生き残った夏からの贈り物。死を忘れた彼の残香はそれから幾日も私を虜にし、ついにそれは香水になった。(出典:noseshop)
チュベローズは別名「月下香」とも呼ばれ、夜に花開くときが一番豊満な香りを醸し出すんだそうです。
その芳しい香りから、男女がチュベローズ畑ですれ違うと恋に落ちてしまうとも恐れられ、通行が禁止になったという逸話も残されています。
チュベローズの開花時期は夏の暑さがまだ残っている9月〜10月。 チュベローズがまさに見頃を迎えたときの香りと、眩しい夏が過ぎ去ってしまった寂しい気持ちをリンクさせたのがチュベローシスです。
開幕、チュベローズの豊満かつ甘いお花の香りがふわっと広がります。 ディプティックの「ドソン」を思い出すような立ち上がりです。
ドソンの方がやっぱり少し重いかな。調香師がジャン=クロード・エレナなので、重くなりがちなチュベローズの香りもやや軽やかになっている気がします。
ムエットではスパイスの香りまでは感じられなかったのですが、実際に肌につけてみたらチュベローズの影にひっそりと佇むスパイスを感じられるかもしれません。
セリーヌ・エレナの創り出した香り
ジャン=クロード・エレナの娘であるセリーヌ・エレナは、香水の本場・フランスのグラースで生まれました。
小さい頃から父の調香を間近で見て、その数々の香りを嗅いできた、まさに英才教育の環境で育った調香師です。
代表作はラルチザンパフュームの「バナ バナナ」や、エルメス初のホームフレグランス「パルファム ドゥ ラ メゾン」など。
現在では父のジャン=クロード・エレナが創立したフレグランスブランド「ザディファレントカンパニー」を引き継ぎ、ユニークなセンスとインスピレーションの元、数々の香水を世に生み出しています。
セリーヌ・エレナの香水は本当に初めて嗅ぐのでとてもワクワクしました!
ジャン=クロード・エレナのDNAを引き継ぐ娘はどんな香りを生み出すのか、考えるだけで大興奮です。
実際に4種類の香りを嗅いでみて思ったのが、父親譲りの軽やかな香り、かつ、フェミニンな雰囲気ということ。 ジャン=クロード・エレナの得意とする「軽やかさ」はそのままに、印象はより女性的でモダン。
香りから滲み出る品の良さも、父親に似たのかなと勝手に想像しています。
スブリーム バルキス/ザディファレントカンパニー
- 50mL:18,150円(税込)
- 100mL:24,750円(税込)
- 原産国:フランス
- 本国表記:SUBLIME BALKISS
- ブランド:The Different Company(ザディファレントカンパニー)
40年代の神秘的な女優に憧れた頃、アイルランドの香りに目覚めた。風、土、ヒース。その感覚を思い出すシプレの香りには、シバの女王バルキスの名を。美しく、賢く、いまだに私達を魅了してやまない女性。(出典:noseshop)
わたしの鼻がまだ未熟なのかもしれないのですが、この香りを嗅いだときはヒースより、ブラックカラントなどのフルーツとベルガモット、お花の香を強く感じました。
ジャン=クロード・エレナと比べると、とてもフェミニンです。 可憐な女性というよりは、ちょっと小悪魔でダークな雰囲気を持つ女性。
ピンクより黒を好んで着るような女の子によく似合いそうです。
スブリーム バルキスは、旧約聖書に登場するシバの女王・バルキスから名前をつけたそうですね。
シバの女王は、婚約者とは違う男性と恋に落ちてしまう愛物語をはじめ、君主としての才覚をメキメキ発揮するような弱さと強さを兼ね備えた魅力溢れる女性だと目にしました。
この香水もどこかシバの女王に共通するような力強さ、そしてその影に潜む弱さ、どちらも感じることができます。 もし、強い女性に憧れているのならばこの香水がきっと合うはず。
ピュア イヴ/ザディファレントカンパニー
- 50mL:18,150円(税込)
- 100mL:24,750円(税込)
- 原産国:フランス
- 本国表記:PURE EVE
- ブランド:The Different Company(ザディファレントカンパニー)
驚くほどピュアでスムーズなブレンド。最高級のムスクは、コットンをミックスしたシルクの肌触りを表現。そしてシダ―ウッドがアクセントを与え、カリソンが甘くソフトな タッチを醸し出す。(出典:noseshop)
今回のムエットシリーズの中では1番甘い香りなのではないでしょうか。
嗅いだ瞬間からムスクとコットンで柔らかく包み込まれたふわっとしたお菓子のような甘さに包まれました。
これはムスキーノートというべきか、グルマンノートというべきか。
一つわかるのが、ピュア”イヴ”という名の通り、とても女性的な香りということ。
この香水はムエットではなく、肌の上にのせたときに一番本領を発揮しそうな予感がします。
ムスクに包まれた甘いお菓子が肌の上で体温と溶け合うことで、まるでその人の体臭のように自然に香るのではないでしょうか。とても気になります! この香水に欠かせないのが「カリソン」という南仏プロヴァンス地方のお菓子。
女王の微笑みのために作られたというカリソンは、アーモンドとオレンジ、そしてたっぷりのお砂糖で焼き上げた、ややねっとりとした食感の甘いお菓子だそうです。
日本ではあまり馴染みのないお菓子ですよね。一度食べてみたいところです。
パルファン ド ソンス&ボア/ザディファレントカンパニー
- 50mL:17,050円(税込)
- 100mL:22,550円(税込)
- 原産国:フランス
- 本国表記:SENS ET BOIS
- ブランド:The Different Company(ザディファレントカンパニー)
黒と白、光と影、コントラストを感じる香り。スパイシーな香りただよう木々が生い茂る林の中の、純白のシルクに身を包んだバイオレットの花。 その小さな銀色の眼差しは地面の闇を見つめている。(出典:noseshop)
ファーストインプレッションはなぜかフルーツ。
フルーツは入っていないのですが、とても爽やかで瑞々しいフルーツの香りを感じました。(ベルガモット×ジンジャー?) そのあと深く吸い込んでいくと、奥の方で粉をまとったすみれの花がひっそりと存在します。
アイリスのような粉系の香りにとても近いです。 そのあと香りは複雑になっていき、インセンスが登場したと思ったら、ネロリがいたり、パチョリもいたり…。
一見、爽やかで可憐な香りなのですが、なんだか嗅げば嗅ぐほどに色々な顔を見せてくれるのでとても面白い香りだと思いました。
セル ド ベティベル/ザディファレントカンパニー
- 50mL:18,150円(税込)
- 100mL:24,750円(税込)
- 原産国:フランス
- 本国表記:SEL DE VETIVER
- ブランド:The Different Company(ザディファレントカンパニー)
雨があがるにつれてベチバーの根から立ち上るあたたかく燃えるような匂い。 海から上がると太陽が照りつけてやわらかな肌に残る塩・・・。あたたかい甘さと塩の香りの調和は野性的で神秘的。(出典:noseshop)
今回のザディファレントカンパニーの中では一番ユニセックスな香りです。
海風にさらされた、雨上がりの土の香り、太陽に照らされた暖かな香り。
ベチバー系の香水って、どうしても元の香りが重いのでヘビーになりがちなのですが、セル ド ベティベルはシーソルトが一緒に含まれているからなのか、とても軽やか!
そして爽やか。これはセリーヌ・エレナだからこそ調香できた香りなのではないでしょうか。
とびきり暑い夏につけたくなるような心地の良い香りです。
それにしてもベチバーってどうしてこうも良い香りなのでしょう。この間も店頭でベチバーの精油を嗅いでは恍惚としてしまいました。いつか練り香水を作るときには入れたいな。
まとめ
エレナ親子は共通して「軽やかで上品な香り」を創り出す天才なんだと実感しました。 親子とはいえど違う人間なので、もちろん香りの好みやセンスは違うのですが、根本はなんだか似ているような気がします。 親子共演の香りはとても新鮮で面白い企画でした。 ますますノーズショップの株が急上昇です。ああ、次はどんな香りと出会えるのかしら。